平成30年版過労死等防止対策白書が公表されました
「過労死等防止対策白書」は、過労死等防止対策推進法に基づき、国会に報告を行う法定白書であり、過労死等の概要や政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況を取りまとめたものです。平成30年版で3回目となります。平成30年版白書のポイントは2点あり、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直しの経緯及び変更後の大綱の概要について記載されていること、旧大綱に記載された5つの重点業種・職種(教職員、IT産業、医療を中心)についての調査分析結果を記載されていることになります。
■過労死等防止のための対策に関する大綱の変更
・過労死等防止対策の数値目標
以下の数値目標を設定
1:週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下
※特に長時間労働が懸念される週労働時間40時間以上の雇用者の労働時間の実情を踏まえつつ、この目標の達成に向けた取組を推進
2:勤務間インターバル制度について、・勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を20%未満・勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上
3:年次有給休暇の取得率を70%以上※特に、年次有給休暇の取得日数が0日の者の解消に向けた取組を推進
4:メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上
5:仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上
6:ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上
・国が取り組む重点対策
1 労働行政機関等における対策
(1)長時間労働の削減に向けた取組の徹底
(2)過重労働による健康障害の防止対策
(3)メンタルヘルス対策・ハラスメント対策等
2 調査研究等(自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界を重点業種・職種として実施)
3 啓発
(1)国民に向けた周知・啓発の実施
(2)大学・高等学校等における労働条件に関する啓発の実施
(3)長時間労働の削減のための周知・啓発の実施
(4)過重労働による健康障害の防止に関する周知・啓発の実施
(5)勤務間インターバル制度の推進
(6)働き方の見直しに向けた企業への働きかけの実施及び年次有給休暇の取得促進
(7)メンタルヘルス対策に関する周知・啓発の実施
(8)職場のハラスメントの予防・解決のための周知・啓発の実施
(9)商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進(上記重点業種・職種に加え、宿泊業等について取組を記載)
(10)若年労働者、高年齢労働者、障害者である労働者等への取組の推進
(11)公務員に対する周知・啓発等の実施等
4 相談体制の整備等
5 民間団体の活動に対する支援
■重点業種・職種の調査・分析結果
【教職員】
労災及び地方公務員の公務災害支給決定(認定)事案の分析
○脳・心臓疾患事案の発症に係る長時間労働の要因は、中学校教員及び高等学校教員では担任、部活動に関連する業務が多い(地方公務員19件(高校4件、中学15件)において、担任16件(高校4件、中学12件)、部活動顧問18件(高校4件、中学14件)(複数該当))。
○精神障害事案の発病に関与したと考えられる業務によるストレス要因は、教員では保護者対応等の「住民等との公務上での関係」が多い(地方公務員23件において、「住民等との公務上での関係」が13件)。
労働・社会面の調査
○一日の平均勤務時間は、学校種別では中学校で長く(11時間37分)、職名別では副校長・教頭で長い(12時間33分)。
○ストレスや悩みの内容は、長時間勤務の多さ(43.4%)、職場の人間関係(40.2%)の他に、保護者・PTA等への対応(38.3%)が多い。また、中学校においては部活動も多い(42.0%)。
○学校における過重勤務防止に向けて必要だと感じる取組は、教員の増員(78.5%)、学校行事の見直し(54.4%)の他にコミュニケーションに関するものが多く(管理職から教員への積極的な声かけ37.9%、教員同士のコミュニケーションの円滑化43.1%)、校長が取り組んでいる取組は、校内会議時間の短縮(39.1%)、学校行事の見直し(28.2%)の他にコミュニケーションに関するもの(管理職から教員への積極的な声かけ34.0%、教員同士のコミュニケーションの円滑化25.0%)が多い。
【IT産業】
労災支給決定(認定)事案の分析
○脳・心臓疾患及び精神障害事案ともに、30代から40代と比較的若い世代で多い(脳・心臓疾患22件において、30代5件、40代14件。精神障害38件において、30代16件、40代11件)。
○脳・心臓疾患事案の発症に係る長時間労働の要因は、厳しい納期、顧客対応、急な仕様変更等となっている(脳・心臓疾患22件において、厳しい納期8件、顧客対応4件、急な仕様変更2件)。
○精神障害事案の発病に関与したと考えられる業務によるストレス要因は、長時間労働が多い(精神障害38件(平成23年認定基準に基づき認定した事案)において、極度の長時間労働8件、恒常的な長時間労働20件)。
労働・社会面の調査
○長時間労働が発生する理由は、トラブル等の緊急対応(59.1%)、顧客対応(47.9%)、仕様変更(42.5%)等、主に発注者等顧客からの要望等への対応が多い。
○業務に関連するストレスや悩みの内容は、納期厳守等のプレッシャー(48.5%)、職場の人間関係(36.8%)が多い。
○過重労働の防止に向けた取組を実施するに当たっての課題は、顧客の理解・協力が必要であるが多い(56.1%)。
【医療】
労災支給決定(認定)事案の分析
○医師について、脳・心臓疾患の事案の割合が多く(脳・心臓疾患17件、精神障害8件)、その発症に係る要因はほとんどが長時間労働であり、具体的には診療業務、管理業務等が多い(17件のうち、診療業務16件、管理業務14件(複数該当))。
○看護師について、精神障害の事案の割合が多く(脳・心臓疾患1件、精神障害52件)、そのほとんどが女性(52件のうち、51件女性)であり、約半数が30代以下(52件のうち、20代以下12件、30代15件)。また、その発病に関与したと考えられる業務によるストレス要因は、患者からの暴力や入院患者の自殺の目撃等の「事故や災害の体験・目撃をした」が、約8割と特に多く(52件のうち、「悲惨な事故や災害の体験・目撃した」40件(76.9%))、その発生時刻は深夜帯が多い(40件のうち、19件が深夜24時から8時に発生)。
労働・社会面の調査
○時間外労働が発生する理由は、医師、看護師ともに、診断書、カルテ等又は看護記録等の書類作成(医師57.1%、看護職員57.9%)、救急や入院患者の緊急対応(医師57.0%、看護師45.0%)が多い。
○過重労働の防止のために実施している取組は、医療事務作業補助者や看護補助者を増員(59.5%)、メンタルヘルスに関する相談窓口等を設置(55.2%)が多い。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html