【令和6年雇用保険制度の改正内容について】
令和6年5月10日に成立しました「雇用保険法等の一部を改正する法律」について、雇用保険制度の改正内容を含んだ、改正内容全般の資料が公表されています。主要な改正項目ごとの説明も行われていますので、是非ご確認ください。
【雇用保険法等の一部を改正する法律の概要】
<改正の趣旨>
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため、雇用保険の対象拡大、教育訓練やリ・スキリング支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置を講ずる。
<改正の概要>
1:雇用保険の適用拡大【雇用保険法、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律】
○雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大する(※1)。
※1これにより雇用保険の被保険者及び受給資格者となる者については、求職者支援制度の支援対象から除外しない。
2:教育訓練やリ・スキリング支援の充実【雇用保険法、特別会計に関する法律】
①自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする(※2)。
※2自己都合で退職した者については、給付制限期間を原則2か月としているが、1か月に短縮する通達。
②教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げる(※3)。
※3教育訓練受講による賃金増加や資格取得等を要件とした追加給付10を新たに創設する省令。
③自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金を創設する。
3:育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保【雇用保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律】
①育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置(※4)を廃止する。
※4本来は給付費の1/8だが、暫定措置で1/80とされている。
②育児休業給付の保険料率を引き上げつつ(0.4%→0.5%)、保険財政の状況に応じて引き下げ(0.5%→0.4%)られるようにする(※5)。
※5①・②により、当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整。
4:その他雇用保険制度の見直し【雇用保険法】
○教育訓練支援給付金の給付率の引下げ基本手当の(80%→60%)及びその暫定措置の令和8年度末までの継続、介護休業給付に係る国庫負担引下げ等の暫定措置の令和8年度末までの継続、就業促進手当の所要の見直し等を実施する。
<施行期日>
令和7年4月1日ただし、3①及び4の一部は公布日、2②は令和6年10月1日、2③は令和7年10月1日、1は令和10年10月1日
■雇用保険の適用拡大【雇用保険法等の一部を改正する法律案】
【現状・課題】
○雇用労働者の中で働き方や生計維持の在り方の多様化が進展していることを踏まえ、雇用のセーフティネットを拡げる必要がある。
【見直し内容】
○雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大。
(R4年度末時点の被保険者数は約4,457万人)
※給付は別基準とするのではなく、現行の被保険者と同様に、基本手当、教育訓練給付、育児休業給付等を支給。
<施行期日>
2028(令和10)年10月1日
■自己都合離職者の給付制限の見直し【雇用保険法等の一部を改正する法律案】
【現状・課題】
○自己都合離職者に対しては、失業給付(基本手当)の受給に当たって、待期満了の翌日から原則2ヶ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)の給付制限期間がある。
※ただし、ハローワークの受講指示を受けて公共職業訓練等を受講した場合、給付制限が解除される。
○労働者が安心して再就職活動を行えるようにする観点等を踏まえ、給付制限期間を見直す必要がある。
【見直し内容】
○離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限を解除。
※このほか、通達の改正により、原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮する。ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付
制限期間を3ヶ月とする。
<施行期日>
2025(令和7)年4月1日
■教育訓練給付の拡充【雇用保険法等の一部を改正する法律案】
【現状・課題】
○厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合にその費用の一部を支給すること(教育訓練給付)を通じて、労働者の学び直し等を支援している。
○個人の主体的なリ・スキリング等への直接支援をより一層、強化、推進するとともに、その教育訓練の効果(賃金上昇や再就職等)を高めていく必要がある。
【見直し内容】
○教育訓練給付金の給付率の上限を受講費用の70%から80%に引き上げる。【法律事項】
・専門実践教育訓練給付金中長期的キャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練講座を対象)について、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合、現行の追加給付に加えて、更に受講費用の10%(合計80%)を追加で支給する。
【省令】
・特定一般教育訓練給付金(速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練講座を対象)について、資格取得し、就職等した場合、受講費用の10%(合計50%)を追加で支給する。【省令】
<施行期日>
2024(令和6)年10月1日
■教育訓練中の生活を支えるための給付の創設【雇用保険法等の一部を改正する法律案】
【現状・課題】
○労働者が自発的に、教育訓練に専念するために仕事から離れる場合に、その訓練期間中の生活費を支援する仕組みがない。
○労働者の主体的な能力開発をより一層支援する観点からは、離職者等を含め、労働者が生活費等への不安なく教育訓練に専念できるようにする必要がある。
【見直し内容】
○雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金を創設する。
<施行期日>
2025(令和7)年10月1日
※上記のほか、雇用保険被保険者以外の者を対象に、教育訓練費用と生活費を融資対象とする新たな融資制度を創設予定。【省令】
■育児休業給付を支える財政基盤の強化【雇用保険法等の一部を改正する法律案】
【現状・課題】
○育児休業給付については、育児休業の取得者数増等を背景に、支給額は年々増加しており、財政基盤の強化が急務。
(現在の国庫負担割合:本則1/8のところ暫定措置として1/80、現在の保険料率:0.4%)
【見直し内容】
○男性育休の大幅な取得増等に対応できるよう、育児休業給付を支える財政基盤を強化するため、令和4年雇用保険法改正法の附則の規定を踏まえ、
①令和6年度から、国庫負担割合を現行の1/80から本則の1/8に引き上げる
②当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げる改正を行うとともに、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組み(注)を導入する
(注)
前年度の決算を踏まえた該当年度の積立金残高(見込み)と翌年度の収入(見込み)の合計額が、翌年度の支出(見込み)の1.2倍を超える場合は、翌年度の料率を0.4%とすることができることとする。
<施行期日>
①公布日又は2024(令和6)年4月1日のいずれか遅い方、②2025(令和7)年4月1日
■その他(令和6年度末までの暫定措置)【雇用保険法等の一部を改正する法律案】
【現状・課題】
○雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付(雇用機会が不足する地域における給付日数の延長)、教育訓練支援給付金(45才未満の者に基本手当の80%を訓練受講中に支給)は、令和6年度末までの暫定措置とされている。
○暫定措置の在り方について、検討する必要がある。
【見直し内容】
○雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付を2年間延長する。
○教育訓練支援給付金の給付率を基本手当の60とした上で、2年間延長する。
※そのほか介護休業給付に係る国庫負担割合を1/80(本則1/8)とする暫定措置を2年間延長する。
<施行期日>
2025(令和7)年4月1日
■その他(就業促進手当)【雇用保険法等の一部を改正する法律案】
【現状・課題】
○安定した職業以外の職業に早期再就職した場合の手当として就業手当が、早期再就職し、離職前の賃金から再就職後賃金が低下していた場合に低下した賃金の6か月分を支給する手当として就業促進定着手当が設けられている。
○支給実績や人手不足の状況等を踏まえた各手当の在り方について、検討する必要がある。
【見直し内容】
○就業手当を廃止するとともに、就業促進定着手当の上限を支給残日数の20%に引き下げる。
<施行期日>
2025(令和7)年4月1日
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40264.html