2021年01月20日 新着情報

「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」が、第201回通常国会において、令和2年6月5日に成立し、同年6月12日に令和2年法律第48号として公布されています。本法律による改正事項のうち、①リーチサイト※対策及び写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大など著作物利用の円滑化を図るための措置については、令和2年10月1日から、②侵害コンテンツのダウンロード違法化及びアクセスコントロールに関する保護の強化など著作権の適切な保護を図るための措置については、令和3年1月1日から、③プログラム登録に関する新たな証明制度の創設については、公布から1年以内で、政令で定める日から施行されることとなっています。

※リーチサイトとは、自身のウェブサイトにはコンテンツを掲載せず、他のウェブサイトに蔵置された著作権侵害コンテンツへのリンク情報等を提供して利用者を侵害コンテンツへ誘導するためのウェブサイト

■改正の趣旨


本法律は、平成31年2月の「文化審議会著作権分科会報告書」等を踏まえ、著作物等を巡る近時の社会状況の変化等に適切に対応するため、インターネット上の海賊版対策をはじめとした著作権等の適切な保護を図るための措置や、著作物等の利用の円滑化を図るための措置を講ずるものです。具体的な改正事項は、以下のとおりです。

1.インターネット上の海賊版対策の強化
 ① リーチサイト対策
 ② 侵害コンテンツのダウンロード違法化

2.その他の改正事項
(1)著作物の円滑な利用を図るための措置
 ① 写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大
 ② 行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)
 ③ 著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

(2)著作権の適切な保護を図るための措置
 ④ 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化
 ⑤ アクセスコントロールに関する保護の強化

(3)その他
 ⑥ プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)
※権利制限規定:著作権者の権利を制限し、著作権者の許諾なく著作物を利用することができる例外的な場面を定めた規定。

■改正の背景(海賊版被害の実態等)


近年、インターネット上の海賊版による被害が深刻さを増してきており、早急に対策を講じないと、クリエイターやコンテンツ産業に回復困難な損害が生じるおそれがあります。関係団体による推計によると、巨大海賊版サイト「漫画村」では約3、000億円の出版物がタダ読みされ、漫画家・出版社の収入・売上が大きく減少したとの試算や、日本最大級のリーチサイト「はるか夢の址」では1年間の被害額が約731億円にのぼるとの試算が示されています。

また、これらのサイト閉鎖後も依然として膨大な数の海賊版サイトが存在しており、昨年11月時点において、出版分野のアクセス数上位10サイトに限っても月間延べ利用者が6、500万人に及んでいました(本年4月時点では、アクセス数上位10サイトに限っても延べ利用者数は8、700万人程度と増加)。海賊版による被害は漫画・雑誌に限られるものではなく、写真集・文芸書・専門書、ビジネスソフト、ゲーム、学術論文、新聞など、著作物の分野・種類を問わず、海賊版による被害が発生しています。
こうした被害実態等を踏まえ、海賊版対策をより実効性あるものとする観点から、本法律では、①ユーザーを侵害コンテンツの誘導する「リーチサイト」等の規制や、②侵害コンテンツのダウンロード違法化の対象範囲の拡大を行うこととしました。

これらの措置により、多数存在しているリーチサイトを直接規制することが可能となり、ユーザーの侵害コンテンツへのアクセスを大きく減少させることが出来るものと考えています。また、漫画などの侵害コンテンツのダウンロードに関しては、2019年10月に行った国民アンケートにおいて、違法化・刑事罰化がされた場合にはダウンロードを「やめる」・「減らす」と回答した者の割合が9割以上に上っており、同様に大きな効果が見込めるものと考えています。

■改正の概要


(1)インターネット上の海賊版対策の強化
① リーチサイト対策【第113条第2項~第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等関係】
侵害コンテンツへのリンク情報等を集約してユーザーを侵害コンテンツに誘導する「リーチサイト」や「リーチアプリ」を規制するものです。

具体的には、悪質なリーチサイト・リーチアプリを「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するもの」及び「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるもの」として規定した上で、リーチサイト運営行為及びリーチアプリ提供行為を刑事罰(5年以下の懲役等:親告罪)の対象とするとともに、リーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツへのリンク等を提供する行為を、著作権等を侵害する行為とみなし、民事措置及び刑事罰(3年以下の懲役等:親告罪)の対象としています。

② 侵害コンテンツのダウンロード違法化【第30条第1項第4号・第2項、第119条第3項第2号・第5項等関係】
違法にアップロードされた著作物のダウンロード規制(私的使用目的であっても違法とする)について、対象を音楽・映像から著作物全般(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)に拡大するものです。

その際、海賊版対策としての実効性確保」と「国民の正当な情報収集等の萎縮防止」のバランスを図る観点から、規制対象を、違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合のみとするとともに、(ⅰ)スクリーンショットを行う際の写り込み(下記(2)参照)、(ⅱ)漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」、(ⅲ)二次創作・パロディ、(ⅳ)「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」のダウンロードを規制対象から除外しています。また、刑事罰については、特に悪質な行為に限定する観点から、正規版が有償で提供されている著作物を反復・継続してダウンロードする場合に限定しています。

このほか、本法律の附則では、国民への普及啓発・教育の充実、関係事業者による適法サイトへのマーク付与の推進、刑事罰の運用に当たっての配慮等について規定し、運用面からも国民の懸念・不安等に対応していくこととしています。


(2)その他の改正事項
① 写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大【第30条の2関係】
スマートフォンやタブレット端末等の急速な普及や動画投稿・配信プラットフォームの発達等の社会実態の変化に対応して、写り込みに係る権利制限規定の対象範囲を拡大するものです。

具体的には、(ⅰ)「写真の撮影」「録音」「録画」に限定されていた対象行為を、複製や伝達行為全般(例:スクリーンショット、生配信、CG化)に拡大した上で、(ⅱ)創作性が認められない行為を行う場面(例:固定カメラでの撮影)における写り込みも対象とし、(ⅲ)メインの被写体に付随する著作物であれば、分離が困難でないもの(例:子供に抱かせたぬいぐるみ)も対象とすることとしており、日常生活等において一般的に行われる行為に伴う写り込みが幅広く認められることとなります。一方で、従来からの付随性・軽微性等の要件は維持するとともに、新たに「正当な範囲内」という要件を規定することで、濫用的な利用や権利者の市場を害するような利用を防止しています。

② 行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)【第42条第2項関係】
従来から、特許審査手続等においては権利者に許諾なく必要な文献等の複製等ができることとしていたところ、(ⅰ)地理的表示法(GI法)に基づく地理的表示の登録、(ⅱ)種苗法に基づく植物の品種登録についても、審査が迅速・的確に行われるよう、権利者に許諾なく必要な文献等の複製等ができるようにするものです。また、今後、同様の措置が必要な行政手続の存在が明らかとなった場合に柔軟に対応できるよう、政令により、随時手続を追加することを可能としています。

③ 著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入【第63条の2関係】
従来は、著作権者から許諾を受けて著作物を利用しているライセンシーは、著作権が譲渡された場合、著作権の譲受人などに対して著作物を利用する権利(利用権)を対抗できず、利用を継続できないおそれがありました。このような事態を解消し、ライセンシーが安心して利用を継続することができるよう、利用権を著作権の譲受人などに対抗できる制度を導入するものです(特許法における通常実施権の場合と同様、対抗するために登録等の要件を備えることは不要です)。

④ 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化【第114条の3関係】
著作権侵害訴訟における書類提出命令をより実効的なものとする観点から、手続の強化を図るものです。

具体的には、平成30年の特許法等改正と同様、(ⅰ)裁判所が書類提出命令の可否について適切な判断ができるよう、命令を発する必要性の有無を判断する前の段階で、実際の書類を見ることができるようにするとともに、(ⅱ)専門性の高い書類等について、実際の書類を見て判断する際に専門委員(大学教授など)のサポートを受けられるようにしています。

⑤ アクセスコントロールに関する保護の強化【第2条第1項第20号・第21号、第113条第7項、第120条の2第4号等関係】
コンテンツの不正利用を防止する「アクセスコントロール」の保護に関して、シリアルコードを利用したライセンス認証など最新の技術に対応できるよう規定の整備を行うものです。

具体的には、平成30年の不正競争防止法の改正と同様、アクセスコントロールに関して、(ⅰ)定義規定の改正(ライセンス認証など最新の技術が保護対象に含まれることを明確化)、(ⅱ)ライセンス認証などを回避するための不正なシリアルコードの提供等に対する規制(著作権等の侵害とみなす行為に追加)を行うこととしています。

⑥ プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)
【プログラム登録特例法第4条、第26条等関係】
プログラムの著作物に係る登録制度に関して、関係者のニーズや、文化庁長官の指定する「指定登録機関」(一般財団法人ソフトウェア情報センター)からの要請を踏まえ、規定の整備を行うものです。

具体的には、(ⅰ)訴訟等での立証の円滑化に資するよう、著作権者等が自ら保有するプログラムの著作物(訴訟等で係争中のもの)と、事前に登録をしたプログラムの著作物が同一であることの証明を請求できる制度を導入する(これにより、登録による事実関係(例:創作年月日)の推定効果を確実に享受できるようになる)とともに、(ⅱ)国及び独立行政法人が登録を行う場合の手数料免除規定を廃止することとしています。


(3)施行期日
本法律による改正事項のうち、上記(1)①(リーチサイト対策)及び(2)①~③(著作物利用の円滑化を図るための措置)については「令和2年10月1日」から、上記(1)②(侵害コンテンツのダウンロード違法化)及び(2)④・⑤・⑥(ⅱ)(著作権等の適切な保護を図るための措置)については「令和3年1月1日」から、上記(2)⑥(ⅰ)(プログラム登録に関する新たな証明制度の創設)については「公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日」から、それぞれ施行されることとなっています。

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ
[ 文化庁 ]
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/r02_hokaisei/
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