NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)
国税庁はNFTに関する税務上の一般的な取扱いを質疑応答形式(FAQ)で取りまとめ公表ました。「NFT」(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一の性質を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつ、非代替性のトークン(暗号資産)のことです。これに対し「仮想通貨」は代替性トークンになります。
公表された取扱いは、所得税関係、相続・贈与税関係、源泉所得税関係、消費税関係、財産債務調書・国外財産調書関係を網羅した全15項目となっており、例えば、作成したデジタルアートを紐付けた、NFTを譲渡した利益は所得税の課税対象となるが、贈与した場合、課税関係は無い、などです。
このほか、第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合、役務提供の対価として取引先が発行するトークンを取得した場合、NFTを贈与又は相続により取得した場合、デジタルアートの制作者・転売者の消費税の取扱い、財産債務調書への記載の要否などについての税務上の取扱いがわかりやすく整理されています。
デジタルアートなどのデジタル資産をNFTに紐付けることで唯一無二の資産であることが証明でき、希少性も担保されて、投資商品としても流通するようになったNFTですが、歴史が浅いため法整備が追いついておらず不安材料にもなっていました。このほど税務上の取扱いが整理されたことで各方面から注目を集めています。
下記にFAQのうちから抜粋してご紹介します。
■NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)
このFAQは、NFTに関する税務上の一般的な取扱いについて、質疑応答形式で取りまとめたものです。
※NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一の性質を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつトークンをいいます。
※この情報は、令和5年1月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
※この情報は、一般的な取扱いを回答したものであり、納税者の方々が行う具体的な取引等については、この回答と異なる取扱いとなる場合があることにご注意ください。
【所得税・法人税関係】
問1.NFTを組成して第三者に譲渡した場合(一次流通)
Q:私は、デジタルアートを制作し、そのデジタルアートを紐づけたNFTをマーケットプレイスを通じて第三者に有償で譲渡しました。これにより、NFTを購入した第三者は、当該デジタルアートを閲覧することができるようになります。この場合の所得税の取扱いを教えて下さい。
A:デジタルアートを制作し、そのデジタルアートを紐づけたNFTを譲渡したことにより得た利益は、所得税の課税対象となります。
【解説】
○所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。
○ご質問の取引は、「デジタルアートの閲覧に関する権利」の設定に係る取引に該当し、当該取引から生じた所得は、雑所得(又は事業所得)に区分されます。
○この場合の雑所得の金額は、次の算式で計算します。
【算式】
雑所得の金額=NFTの譲渡収入―NFTに係る必要経費
(注1)NFTの譲渡収入をマーケットプレイス内で通貨として流通するトークンで受け取った場合には、そのトークンの時価が譲渡収入となります。
ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、譲渡したNFTの市場価額(市場価額がない場合には、譲渡したNFTの売上原価等)をそのトークンの時価と取り扱って差し支えありません。
(注2)NFTに係る必要経費とは、NFTの譲渡収入を得るために必要な売上原価の額並びに販売費及び一般管理費の額などをいいます。なお、NFTの売上原価は、そのNFTを組成するために要した費用の額となり、デジタルアートの制作費は含まれません。
(注3)雑所得の金額が赤字の場合(損失が生じた場合)には、他の所得との損益通算はできません(雑所得内の通算は可能です。)。
【参考:法人税の取扱い】
○法人がデジタルアートを制作して、そのデジタルアートを紐づけたNFTを譲渡して適正な対価を得た場合、所得税と同様、その譲渡をして得た利益は法人税の課税対象となります。この場合における法人の所得の金額の計算上、その譲渡の日を含む事業年度の益金の額に算入すべき金額は、その適正な対価の額となります。
【関係法令等】
所法27、35、36、37、69
法法22、22の2
問4.購入したNFTを第三者に転売した場合(二次流通)
Q:私は、デジタルアートの制作者からデジタルアートを紐づけたNFTを購入し、当該デジタルアートを閲覧することができました。今般、マーケットプレイスを通じて、当該NFTを第三者に有償で転売しました。これにより、私が有していた「デジタルアートの閲覧に関する権利」は、第三者に移転することになります。この場合の所得税の取扱いを教えて下さい。
A:デジタルアートを紐づけたNFTを転売したことにより得た利益は、所得税の課税対象となります。
【解説】
○所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。
○ご質問の取引は、「デジタルアートの閲覧に関する権利」の譲渡に該当し、当該取引から生じた所得は、譲渡所得に区分されることになります。
(注)そのNFTの譲渡が、棚卸資産若しくは準棚卸資産の譲渡又は営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡に該当する場合には、事業所得又は雑所得に区分されます。
○この場合の譲渡所得の金額は、次の算式で計算します。
【算式】
譲渡所得の金額=NFTの転売収入―NFTの取得費―NFTの譲渡費用―特別控除額
(注1)NFTの転売収入をマーケットプレイス内の通貨として流通するトークンで受け取った場合には、そのトークンの時価が転売収入となります。ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、転売したNFTの市場価額(市場価額がない場合には、転売したNFTの取得費等)をそのトークンの時価と取り扱って差し支えありません。
(注2)NFTの取得費とは、そのNFTの購入代価と購入の際に要した費用の合計額となります。
(注3)NFTの譲渡費用とは、譲渡に要した費用の額をいいます。
(注4)総合課税の譲渡所得の特別控除の額は50万円です。なお、譲渡益(譲渡収入から取得費及び譲渡費用を差し引いた後の金額)が50万円以下のときは、その金額までしか控除できません。
(注5)譲渡所得の金額が赤字となった場合(損失が生じた場合)には、他の所得との損益通算が可能です。ただし、そのNFTが主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有していたものである場合には、他の所得との損益通算はできません(総合譲渡所得内の通算は可能です。)。
【参考:法人税の取扱い】
○法人が、購入したデジタルアートを紐づけたNFTを適正な対価を得て転売した場合、所得税と同様、その転売をして得た利益は法人税の課税対象となります。この場合における法人の所得の金額の計算上、その転売をした日を含む事業年度の益金の額に算入すべき金額は、その適正な対価の額となります。
【関係法令等】
所法27、33、35、36、37、38、69
所令178
法法22、22の2
問7.商品の購入の際に購入先が発行するトークンを取得した場合
Q:私は、商品の購入の際に、購入先の法人が発行するトークンを無償で取得しました。このトークンは購入先で商品を購入する際に使用することができます。この場合の所得税の取扱いを教えてください。
A:商品の購入の際に、購入先の法人が発行するトークンを無償で取得したことによる経済的利益は、所得税の課税対象となります。
【解説】
○所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。
○トークンを無償で取得した場合の経済的利益は、法人からの贈与に当たることから、一時所得に区分されます。
(注)一時所得の収入金額は、無償で取得したトークンの時価となります。ただし、そのトークンが暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、時価の算定が困難な場合には、そのトークンの時価を0円として差し支えありません。
【関係法令等】
所法34、36
問8.ブロックチェーンゲームの報酬としてゲーム内通貨を取得した場合
Q:私は、ブロックチェーンゲームをプレイし、その報酬として、ゲーム内通貨(トークン)を取得しました。この場合の所得税の取扱いを教えてください。
A:ブロックチェーンゲームで得た報酬は、原則として、所得税の課税対象となります。
【解説】
○所得税法における所得とは、収入等の形で新たに取得する経済的価値と解されており、ご質問の場合、収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。ただし、そのゲーム内通貨(トークン)が、ゲーム内でしか使用できない場合(ゲーム内の資産以外の資産と交換できない場合)には、所得税の課税対象となりません。
○ブロックチェーンゲームの報酬は、雑所得に区分され、雑所得の金額は、次の算式で求めることとなります。
【算式】
雑所得の金額=ブロックチェーンゲームの収入金額-ブロックチェーンゲームの必要経費
(注1)ブロックチェーンゲームの収入金額は、ブロックチェーンゲームで得たゲーム内通貨(トークン)の総額となります。ゲーム内通貨(トークン)の評価は、ゲーム内通貨(トークン)の取得の都度行うこととなります。ただし、ゲーム内通貨(トークン)ベースで増減額を管理し、月末又は年末に一括で評価することもできます。なお、暗号資産に直接交換できないなどの理由により、ゲーム内通貨(トークン)の時価の算定が困難な場合には、時価を0円として差し支えありません。
※この場合のブロックチェーンゲームの報酬への課税時期は、「ゲーム内通貨(トークン)」を「暗号資産と交換できる他のトークン」に交換した時となります。
(注2)ブロックチェーンゲームの必要経費は、ブロックチェーンゲームの報酬を得るために使用したゲーム内通貨(トークン)の取得価額の総額となります。
ゲーム内通貨(トークン)の取得価額については、
・購入したゲーム内通貨(トークン)については、購入価額
・ブロックチェーンゲームで取得したゲーム内通貨(トークン)については、収入金額とした金額(具体的には(注1)で評価した金額)
となります。
○なお、ブロックチェーンゲームにおいては、ゲーム内通貨(トークン)の取得や使用が頻繁に行われ、取引の都度の評価は、煩雑と考えられることから、ゲーム内通貨(トークン)ベースで所得金額を計算し、年末に一括で評価する方法(簡便法)で雑所得の金額を計算して差し支えありません。
【簡便法】
・その年の12月31日に所有するゲーム内通貨(トークン)の総額
-その年の1月1日に所有するゲーム内通貨(トークン)の総額
-その年に購入したゲーム内通貨(トークン)の総額
=ゲーム内通貨(トークン)ベースの所得金額
・ゲーム内通貨(トークン)ベースの所得金額×年末の暗号資産への換算レート=雑所得の金額
(注)年の中途で、暗号資産に交換したゲーム内通貨(トークン)がある場合には、交換で取得した暗号資産の価額を雑所得の金額に加算します。
・ゲーム内通貨(トークン)が暗号資産と交換できないなど時価の算定が困難な場合には、雑所得の金額は0円として差し支えありません。
※この場合、「ゲーム内通貨(トークン)」を「暗号資産と交換できる他のトークン」に交換した時点で、当該トークンの価額を雑所得として申告することとなります。
【関係法令等】
所法35、36、37
【相続税・贈与税関係】
問9.NFTを贈与又は相続により取得した場合
Q:NFTを贈与又は相続により取得した場合の贈与税又は相続税の取扱いを教えてください。
A:個人から経済的価値のあるNFTを贈与又は相続若しくは遺贈により取得した場合には、その内容や性質、取引実態等を勘案し、その価額を個別に評価した上で、贈与税又は相続税が課されます。
【解説】
○相続税法上、個人が、金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を贈与又は相続若しくは遺贈により取得した場合には、贈与税又は相続税の課税対象となることとされています。
○この場合のNFTの評価方法については、評価通達に定めがないことから、評価通達5((評価方法の定めのない財産の評価))の定めに基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することとなります。
○例えば、評価通達135((書画骨とう品の評価))に準じ、その内容や性質、取引実態等を勘案し、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価します。
(注)課税時期における市場取引価格が存在するNFTについては、当該市場取引価格により評価して差し支えありません。
〔参考〕
○評価通達(抄)
(評価方法の定めのない財産の評価)
5この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する。
(書画骨とう品の評価)
135書画骨とう品の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
(1)書画骨とう品で書画骨とう品の販売業者が有するものの価額は、133((たな卸商品等の評価))の定めによって評価する。
(2(1))に掲げる書画骨とう品以外の書画骨とう品の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
【関係法令等】
相法2、2の2
相基通達11の2-1
評価通達5、135
【消費税関係】
問11.NFT取引に係る消費税の取扱い①(デジタルアートの制作者)
Q:私はデジタルアート(著作物)の制作を行っている個人事業者ですが、制作したデジタルアートを紐づけたNFTをマーケットプレイスを通じて日本の消費者に有償で譲渡しました。これにより、私はNFTの譲渡を受けた日本の消費者に対して、当該デジタルアートの利用を許諾することとなります。この場合の消費税の取扱いを教えて下さい。
A:本取引は、デジタルアートの制作者(質問者)が、事業として、対価を得て日本の消費者に対して行う著作物の利用の許諾に係る取引であり、電気通信利用役務の提供として、デジタルアートの制作者に消費税が課されます。
【解説】
○消費税法上、国内において事業者が事業として対価を得て行う「資産の譲渡」及び「資産の貸付け」並びに「役務の提供」に対して消費税を課するとされています(注1,2)。
○本取引は、事業として対価を得て行われるものであり、かつ、電気通信回線を介して行われる著作物(著作権法第2条第1項第1号に規定する著作物)の利用の許諾に係る取引と認められますので、「電気通信利用役務の提供」に該当します(消法2①八の三)。
○そして、電気通信利用役務の提供が国内において行われたものかどうかの判定(内外判定)は、役務の提供を受ける者の住所等(個人の場合には住所又は居所)が国内かどうかにより行うこととなります(消法4③三)。
○したがって、本取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う電気通信利用役務の提供として、当該役務の提供を行った者(デジタルアートの利用の許諾を行った質問者)に消費税が課されることとなります(注3,4)。
(注1)給与所得者が行う取引であっても、対価を得て行われる資産の譲渡等が反復、継続、独立して行われるものであれば、「事業として」の取引に該当します。
(注2)無償による取引は原則として消費税の課税対象となりません。
(注3)本取引における取引の相手方は日本の消費者であり、取引の相手方となる者が通常事業者に限られるものとは認められませんので、デジタルアートの制作者(質問者)が国外事業者に該当する場合であっても、本取引は「事業者向け電気通信利用役務の提供」には該当せず、当該役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行ういわゆる「リバースチャージ方式」の対象にはなりません(消法2①八の四)。
(注4)当該役務提供を受ける者の住所等が国外の場合には消費税の課税対象外(不課税)となります。
〔参考〕
その課税期間の基準期間(※1)における課税売上高(※2)が1,000万円を超える(※3)事業者は、消費税の課税事業者となり、消費税の申告及び納付を行う必要があります。
※1原則として、個人事業者は前々年、法人は前々事業年度をいいます。
※2課税売上高とは、消費税が課税される取引の売上金額(消費税及び地方消費税を除いた税抜金額)と、輸出取引などの免税売上金額の合計額です。返品、値引きや割戻し等に係る金額がある場合には、これらの合計額(消費税及び地方消費税を除いた税抜金額)を控除した残額をいいます。なお、基準期間において免税事業者であった場合には、その基準期間中の課税売上高には消費税が含まれていませんので、基準期間における課税売上高を計算するときには税抜きの処理は行いません。
※3その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間(個人事業者はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます。)における課税売上高が1,000万円を超える場合には、課税事業者となります)。
なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額によることもできます。
【関係法令等】
消法2、4、5、9、9の2、28、45
消令6、45
消基通達1-4-5、5-1-1、5-1-2、5-7-15の2、5-8-3、5-8-4
〔凡例〕
文中、文末引用の法令等の略称は以下のとおりです。
所法……………………所得税法(昭和40年法律第33号)
法法……………………法人税法(昭和40年法律第34号)
相法……………………相続税法(昭和25年法律第73号)
消法……………………消費税法(昭和63年法律第108号)
国外送金等調書法……内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(平成9年法律第110号)
所令……………………所得税法施行令(昭和40年政令第96号)
消令……………………消費税法施行令(昭和63年政令第360号)
国外送金等調書令……内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令(平成9年政令第363号)
国外送金等調書規則…内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行規則(平成9年大蔵省令第96号)
相基通達………………相続税法基本通達(昭和34年1月28日付直資10)
消基通達………………消費税法基本通達(平成7年12月25日付課消2-25ほか4課共同)
評価通達………………財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56、直審(資)17)
詳しくは下記参照先をご覧ください。