2023年07月05日 新着情報

首相官邸において、「令和5年第7回 経済財政諮問会議」が開催されました。今回の議事は、「経済・財政一体改革(社会保障)、こども、マイナンバー」及び「経済財政運営と改革の基本方針(骨子案)」についてです。

議長である岸田総理は、この日の議論を踏まえ、次のようにコメントしています。

●社会保障分野の改革について
成長と分配の好循環の実現には、生活の安定や将来の安心感の基盤となる社会保障の機能強化と持続性への信頼向上、そして、保険料負担の上昇抑制による可処分所得向上が欠かせない。

厚生労働大臣及び関係大臣においては、本日の議論も踏まえ、地域医療構想の実現を始め、医療・介護一体での強靭で効率的な提供体制の構築、徹底した給付の見直しや労働参加を促す制度整備、改革工程表の推進による持続可能な制度の構築、給付と負担に関する新たな将来見通しの提示、医療・介護・福祉におけるイノベーションの促進、データ利用環境整備、マイナンバー制度を核とする行政DXの本格化を重点的に進めてほしい。

●骨太方針2023の骨子案について
骨太方針2023においては、岸田内閣が掲げる新しい資本主義の加速に向けて、構造的賃上げの実現に向けた三位一体の労働市場改革や人への投資の強化、官民連携による国内投資の拡大やサプライチェーンの強靭化等を通じた投資の拡大と経済社会改革の実行、少子化トレンド反転に向けた少子化対策・こども政策の抜本強化の取組の方向性を明らかにしていく。経済再生担当大臣においては、本日の議論も踏まえ、来月の取りまとめに向けて、関係省庁や与党との調整を進めてほしい。



【社会保障分野における経済・財政一体改革の重点課題とマイナンバー制度の利活用拡大】



急速な少子高齢化・人口減少の下で我が国が持続的な成長を遂げるには、質の高い投資を促すと同時に、分厚い中間層や格差を固定化しない公平で活力ある社会の形成を通じて、国民生活や経済の安定を図る必要がある。

社会保障はその重要な基盤であり、健康で長く働ける環境の整備や給付効率化等を通じた保険料負担の上昇抑制により、家計可処分所得の増加に寄与するとともに、セーフティネット機能の強化や制度の持続性への信頼性向上により、暮らしに安心をもたらすことを通じて消費の押上げに寄与するなど、成長と分配の好循環実現に大きく貢献し得るものである。

こうした機能の発揮に向けて、社会保障分野では、地域を問わず健康で安心して暮らせる医療・介護提供体制の構築や、国民の健康増進へとつながるイノベーションが絶えず生まれるような規制・制度整備、EBPMやワイズスペンディング、応能負担を通じた社会保障制度の持続性の確保を実行していく必要がある。その際、特にマイナンバー制度の利活用を徹底し、家計への効果的な支援と費用抑制の双方を実現することも重要である。

少子化対策への更なる対応が求められる中、こども政策も含めた将来の全世代型社会保障の展望を示すとともに、その給付をどのような保険料・税・資産収入等の財源構成で賄うかについて検討していく必要がある。その前提として、徹底した歳出改革と保険料負担の上昇抑制がこれまで以上に求められている。こども政策の強化も徹底した歳出改革を大前提とすべきである。また今年度は、新型感染症が5類となり平時への移行を早急に進める必要があるとともに、次期診療報酬・介護報酬の同時改定をはじめ懸案の改革を進める極めて重要な年であり、この機を捉えて社会保障改革を一層強力に前進させるべく、骨太方針に向けて、以下提言する。



1.強靭で効率的な医療・介護提供体制の構築

各地域で国民一人一人が健康で安心した暮らしを送ることができるよう、オンライン診療等のデジタル技術の更なる実装を含め、次の施策に取り組み、限られた資源の最適配分を実現すべき。

・地域医療構想は、2025年の目標年限に対して都道府県の権限強化等だけでは進展が不十分であり、改めて実効性が確実に担保できるよう法制上の措置を講ずべき※1。また、基金※2による各種支援策は、期限の定めがないところ、目標年限と整合的に医療機関の行動が促されるよう見直すべき。

※1:例えば、都道府県や医療機関の責務の明確化などを検討すべき。
※2:地域医療介護総合確保基金

・かかりつけ医機能については、医療者が信頼関係の下で継続的に患者の健康状態をケアすることが重要。医療機関がそのための機能を強化し、地域において必要な機能の確保が進むよう※3、かかりつけ医機能報告制度を国民の信頼が得られる実効性の高いものに具体化すべき。また、国民が適切な医療機関を選択できるよう、医療機能情報提供制度を拡充すべき。

・医療・介護分野での他職種間や同一職内でのタスク・シフト/シェアは、来春の医師の時間外労働規制施行、在宅サービスの増大等に備えるため、まったなしの課題。医師、看護師、薬剤師等、様々な職種間の連携や業務の重なり合いも含め、できるものから直ちに実行すべき。※4

・更なる高齢化の下では、医療・介護等の一体提供を行う地域包括ケアシステムがますます重要。介護報酬改定では、医療機関、訪問看護事業所、薬局、介護サービス事業所等の効果的な連携や在宅サービスの充実の推進とともに、実効性を高めるため、科学的根拠に基づく効果的なサービスによる日常動作の維持改善等のアウトカムを重視して配分を見直すべき。

・介護の担い手不足やビジネスケアラー増大※5に対し、NPOや民間企業による「共助」とも連携した対策が必要。ICT機器・ロボットの利活用や経営の大規模化により介護事業者の生産性向上を図るとともに、家事支援や送迎等の介護保険外サービスの振興及び利用促進や、企業向けガイドラインの整備等による企業における介護と仕事の両立に係る取組を推進すべき。

※3:24時間を通じ、妊産婦から小児、高齢者までの幅広い層や様々な診療・介護ニーズへの対応を行うには、医師を含む多職種連携によるグループがかかりつけ医機能を担うことも推進すべき。

※4:産業保健についても、国民の健康増進を確保するため、産業医や保健師・看護師、健診機関、健康管理サービス会社等の連携の在り方等について、時代の変化に対応した見直しを行うべき。

※5:ビジネスケアラー(仕事をしながら家族等の介護に従事する者)は、2017年253万人から2030年には318万人へと増加が見込まれ、その結果、仕事と介護の両立困難等による労働生産性損失額等は2030年時点で9.2兆円程度と見込まれている。(出典:経済産業省産業構造審議会・経済産業政策新機軸部会2023年3月14日資料)


2.医療・介護分野でのイノベーション創出に向けた環境整備

医療・介護は、新たな担い手の参入を通じたヘルスデータの積極活用(HX)や、国際競争力のある新薬の開発等により、産業として高付加価値を生み出す可能性を秘めた分野。イノベーションが創出されるよう規制・制度整備を推進し、その便益が、予防・健康づくりやサービスの効率化・質の向上等、社会全体で享受されるようにすべき。

・電子カルテ標準化や全国医療情報プラットフォーム構築は、医療DX推進本部が定める工程表に沿って着実に実行するとともに、本人同意の下での自治体や介護事業者等の閲覧可能主体の追加や利用可能な情報の拡大(予防接種情報等)など、更なる拡充を図るべき。

・イノベーション促進には、ヘルスデータが創薬や医学研究など社会のために二次利用されることが重要。独法等に分散するデータへの研究者等の円滑なアクセスの確保、必ずしも患者の同意に依存しないデータ提供が可能な制度構築等、基盤整備を更に進めるべき。

・国民の健康づくりには、PHR(Personal Health Record)を活用した民間サービスにより、本人に自身の健康状態を通知し、行動変容を促していくことも重要。このため、データ標準化等の事業環境整備を行うとともに、大学とも連携しつつ、具体的なユースケース創出を進めるべき。

・創薬力強化に向けては、有効な新薬の創出企業が収益を上げ、その資金で次の新薬開発が進むという好循環が必要。薬価改定では、新薬の薬価算定の改善や特許期間中の更なる薬価特例など新薬創出を強力に後押しすべき。同時に、長期収載品の負担やその他薬剤自己負担の在り方等、保険制度の持続性確保に向けた見直しを進めるべき。



3.社会保障制度の安定性・持続性の確保

持続可能な社会保障制度を構築するには、経済再生と財政健全化の両立を図るというマクロ政策運営と整合的な形で、支え手を増やしながら、中長期的に給付と負担のバランスが保たれるよう不断の見直しを行っていく必要がある。こうした観点から次の取組を着実に進めるべき。

・序文の認識に立ち、最新の将来推計人口や働き方の変化等を踏まえた上で、こども政策も社会保障のフレームに含めた新たな給付・負担の将来見通しを明らかにすべき。

・健康寿命が70歳を超える中、年齢にかかわらず仕事を通じて活躍し、支え手に回ることが重要。生産年齢人口の年齢区分の見直しとともに、年金を含め高齢者の就業を妨げない制度整備を推進すべき。また、女性の労働参加・正規化も同様に重要であり、年収の壁の解消や子育てと仕事の両立支援の強化を図るべき。

・その上で、高齢化に伴う給付増に対しては、保険料負担の増加を抑制するため、給付・サービスの見直しに加え、所得・資産に即した応能負担の強化が必要。介護保険の給付と負担も、応能負担等の考え方に沿って検討し、利用者2割負担の判断基準や1号保険料負担、多床室の室料負担の見直しは早期に結論を得るべき。

・緊急包括支援交付金等、コロナ禍で拡大した支出は早急に平時の状態に戻すべき。また、政策効果の検証とそれによる有効な政策立案のためにはデータ整備が不可欠。医療法人の財務情報のデータベースは、できるだけ早期に全ての保険医療機関へと対象を拡大すべき※6。さらに、保険給付の内外にかかわらず医療・介護サービスを包括的に捕捉できる国際基準(OECD Health Expenditure)での速やかなデータ整備と公表の早期化を実現すべき。

・さらに、医療サービスの質の地域差是正・標準化による一人当たり医療費の地域差半減、医師・薬剤師の連携等によるリフィル処方箋の所期の効率化効果の達成※7、OTC医薬品・検査薬の拡大、バイオシミラーの研究開発・普及促進等、改革工程表の施策を着実に推進すべき。


4.DXの利活用を通じた徹底的な行財政効率化と効果的な子育て支援の推進

マイナンバーカードの申請の累計は岸田政権の下で約1億件に倍増し、ほぼ全ての国民に普及。この成果を最大限活用し、マイナンバー制度を核とする行政DXを本格化すべき。社会保障の効率化や安定性・持続性の確保につなげるとともに、こども家庭庁とデジタル庁の連携により、デジタルネイティブ中心の子育て家庭への効果的な支援に活用すべき。

・社会保障におけるデータ蓄積やAI等イノベーションの活用を通じ、EBPMによるワイズスペンディングを徹底し、サービスの利便性向上と費用抑制を両立すべき。

EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)
とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものです。内閣府では、EBPMを推進するべく、様々な取組を進めています。

ワイズ‐スペンディング(wise spending)
「賢い支出」という意味の英語。経済学者のケインズの言葉。不況対策として財政支出を行う際は、将来的に利益・利便性を生み出すことが見込まれる事業・分野に対して選択的に行うことが望ましい、という意味で用いられる。


・多様化する子育て家庭の状況に効率的かつきめ細かく応えるため、共通基盤であるマイナポータルの機能拡充と活用促進の徹底が重要。家庭が様々な支援策から選択できる形に施策の在り方をシフト※8させるとともに、真に必要とする者にはプッシュ型支援を原則とすべき。

・こうした支援を実現させるためにも、地方自治体の基幹業務システムの統一・標準化においては、実務を担う基礎自治体からの意見をよく聴きながら、効率的な情報連携を可能とする機能を同時に搭載すべき。


※6:医療機関については、公的価格評価検討委員会の方針に沿って、職種別給与の提出についても義務化も含めて不断の見直しを図るべき。介護事業者についても、保有資産を含めた財務情報の見える化を進めるべき。

※7:リフィル処方箋は、前回診療報酬改定時に▲0.1%の費用削減効果を前提として予算編成が行われたが、その効果は簡易試算によれば▲0.01%にとどまっている。(出典:財務省財政制度等審議会・財政制度分科会2023年5月11日資料)

※8:例えば、出産・子育て交付金では、各自治体が出産・育児関連商品のクーポン支給、妊婦検診交通費やベビー用品等の費用助成、産後ケア・一時預かり・家事支援サービス等の利用料助成・減免の中から支給形態を判断することが想定されている。


【経済財政運営と改革の基本方針2023骨子案】

 

第1章マクロ経済運営の基本的考え方
1.本基本方針の考え方
2.環境変化に対応したマクロ経済運営
3.持続可能な成長の実現に向けた経済構造の強化

第2章新しい資本主義の加速
1.三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い中間層の形成

2.投資の拡大と経済社会改革の実行
(1)官民連携による国内投資拡大とサプライチェーンの強靱化
(2)グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速
(3)スタートアップの推進と新たな産業構造への転換、社会的インパクト投資の促進
(4)官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進
(5)インバウンド戦略の展開(高度人材等の受入れ、観光、国際金融センターの実現など)

3.少子化対策・こども政策の抜本強化

4.包摂社会の実現(女性活躍、共生・共助社会づくり、就職氷河期世代支援など)

5.地域・中小企業の活性化
(デジタル田園都市国家構想、中堅・中小企業の活力向上、物流対策など)

第3章我が国を取り巻く環境変化への対応
1.国際環境変化への対応
(1)外交・安全保障の強化
(2)経済安全保障政策の推進
(3)エネルギー安全保障の強化
(4)食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進
(5)対外経済連携の促進、企業の海外ビジネス投資促進

2.防災・減災、国土強靱化の推進、東日本大震災等からの復興

3.国民生活の安全・安心

第4章中長期の経済財政運営
1.中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営
2.持続可能な社会保障制度の構築
3.生産性を高め経済社会を支える社会資本整備
4.国と地方の新たな役割分担等
5.経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進

第5章当面の経済財政運営と令和6年度予算編成に向けた考え方
1.当面の経済財政運営について
2.令和6年度予算編成に向けた考え方

詳しくは下記参照先をご覧ください。

参照ホームページ [ 内閣府 ]
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0526/agenda.html
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