【仕事と育児の両立支援制度改正に向けた具体的な議論がスタート】
厚生労働省から、「第60回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」の資料が公表されました。今回の議題に、「仕事と育児の両立支援について」が含まれており、その内容が報道等で取り上げられています。
特に、子が3歳になるまでの両立支援の拡充のため、テレワークを事業主の努力義務に追加すること、短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置にテレワークを追加することといった、テレワークの活用促進の方針が示されていることが注目を集めています。
また、介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等を図る方針も示されています。
【今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する総論 研究会 報告書 概要】
少子高齢化が進む中で、社会経済の活力を維持・向上させるためには、生産性の向上を図りつつ、多様な人材が充実感をもって活躍できる環境整備が課題。
◆育児期:女性が出産・育児を機に離職せず就業継続できる支援と希望するキャリア形成支援。育児・家事を男女で分担、共有。
◆介護期:両立支援により、希望に応じた就業の継続や、豊富な技能や経験をもつ年齢層の労働力の確保へ。
【今後の両立支援制度の検討に当たっての基本的な考え方】
ライフステージにかかわらず全ての労働者が「残業のない働き方」となっていることをあるべき方向性として目指しつつ、以下の点を基本として継続的に取り組んでいく。
■男女が共に望むキャリアを実現
・若い世代を中心とした、夫婦で育児・家事を分担することが自然だという考え方に対応していく。
■働き方改革の推進
・働き方改革をより一層推進し、職場全体の長時間労働の是正や柔軟な働き方を選択できる職場づくりを進めることが重要。
・職場の誰もが休みやすい職場の体制を構築していくため、多能工化や職場の情報の共有により、業務をチームでシェアすることなどの取組も効果的。
両立支援制度の利用について、労働者が自らのキャリア形成に関する希望に応じた選択を行い、育児・介護を始め、治療や学び直しなど様々なライフイベントとの両立が可能に。
■育児期・介護期の支援
・特に育児・介護の負担の大きい時期に、休業や短時間勤務などを、性別にかかわらず気兼ねなく使えることが重要。
・その時期を越えたあとは、柔軟な働き方によりフルタイムで働きながら両立ができるような働き方を促進。
・コロナ禍で広がったテレワークについて、業務に集中できる環境の整備などに配慮しつつ活用促進していく。
1.子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応
(1)子が3歳になるまでの両立支援の拡充
①テレワークの活用促進
・テレワークを、事業主の努力義務とすることが必要。
(就業時間中は保育サービス等を利用して業務に集中できる環境が整備されていることが必要。)
②短時間勤務制度の見直し
・柔軟な勤務時間の設定に対するニーズに対応するため、所定労働時間を1日6時間とする以外の他の勤務時間も併せて設定することを一層促していくことが必要。
・短時間勤務が困難な場合の代替措置の一つに、テレワークも追加することが必要。
(2)子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充
①柔軟な働き方を実現するための措置
・短時間勤務制度
・テレワーク
・始業時刻の変更等
(フレックスタイム制を含む)
・新たな休暇の付与
等のフルタイムでの柔軟な働き方中から、事業主が各職場の事情に応じて、2以上の制度を選択して措置を講じる義務を設けることが必要。
*事業主が制度を選択する制度とすることで業種・職種等に配慮。
*事業主が制度を選択する際には、労働者の代表者等から意見聴取の機会を設ける。
*制度利用者の定期的な面談、心身の健康への配慮も行う。
②残業免除(所定外労働の制限)を3歳以降小学校就学前まで請求を可能とすることが必要。
(就学以降も可能とすべきとの意見もあった。)
(3)子の看護休暇制度の見直し
【取得目的】
育児目的休暇や、コロナ禍で小学校等の一斉休校に伴い、多くの保護者が休暇を取得せざるを得なかったことを踏まえ、子の行事(入園式、卒園式など)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるようにすることが必要。
【取得可能な年齢】
診療を受けた日数等を勘案し、小学校3年生の修了までに引き上げることが必要。(卒業までに引き上げるべきとの意見もあった。)
【勤続6か月未満の労働者】
労働移動に中立的な制度とするため、勤続6か月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みは廃止することが必要。
2.仕事と育児の両立支援制度の活用促進
(1)制度の活用をサポートする企業や周囲の労働者に対する支援
・男女ともに、職場への気兼ねなく育児休業や短時間勤務制度を利用できるように、育児休業や短時間勤務を活用する労働者の業務をカバーするために、代替要員の雇用や周囲の労働者の負担軽減を行う中小企業に対する助成措置の強化が必要。
・企業規模にかかわらず、業務量・達成目標の見直しや体制の整備などに関するノウハウの共有などが必要。
(2)育児休業取得状況の公表や取得率の目標設定について
・当面の間は、男性の育児休業取得の取得促進に向けた取組を一層促進する。
→男性の育児休業取得状況について、常時雇用する労働者が300人超の事業主についても、一定の配慮の上、公表の義務付けが必要と考えられる。
・政府において男性の育児休業取得率の目標を掲げる場合には、取得率だけでなく、男性の育児休業取得日数や育児・家事時間等も含めた目標の検討が必要。
3.次世代育成支援に向けた職場環境の整備
①現在の少子化の進行等の状況や、男女が共に、育児休業や両立支援制度を利用し、育児期に仕事やキャリア形成と育児を両立できる働き方が可能となるような社会の実現に向けた課題が依然として残されていることから、次世代育成支援対策推進法(令和7年3月末で失効予定)の期限を延長するとともに内容を充実し、その仕組みを活用していくことが有効。
②さらに各職場での取組を促進するため、法律により、一般事業主行動計画の策定時に、男性の育児休業取得率等の数値目標の設定やPDCAサイクルの確立を行うよう求める。
③一般事業主行動計画の策定に当たっては、「男女とも仕事と子育てを両立できる職場」であることを目指すため、男性の育児休業の取得促進、子育て期を含めた全ての労働者の時間外労働の縮減や柔軟な働き方の促進等の盛り込むことについて具体的に示すことが必要。
④行動計画策定指針も、上記の方針に沿った見直しが必要。
4.介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等
(1)仕事と介護の両立支援制度の情報提供や、制度を利用しやすい雇用環境の整備の在り方
①個別の周知、情報提供
・介護の必要性に直面した労働者が申出をした場合に、事業主が、両立支援制度等の情報を個別に周知することや、両立支援制度の制度目的を十分に説明した上で、必要な制度が選択できるよう労働者に対して働きかけることが必要。
・事業主が、第2号被保険者となる40歳のタイミングなどに、両立支援制度等の情報提供を一律に行うことが必要。
②雇用環境の整備
・事業主が、介護保険制度や両立支援制度に関する社内セミナーや研修の開催、相談窓口の設置など雇用環境の整備を行うことが必要。
(2)介護休業
・介護の体制を構築するという制度目的に照らすと、介護休業制度の取得日数(対象家族1人につき93日)や分割回数(3回に分けて取得可能)について、現時点でさらに見直しが必要な状況は確認できないと考えられる。
(3)介護期の働き方(介護休暇や短時間勤務等の選択的措置義務、テレワークの在り方等)
・介護休暇についても勤続6か月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みは廃止することが必要。
・テレワークを事業主の努力義務とすることが必要。
5.障害児等を育てる親等、個別のニーズに配慮した両立支援
(1)現行制度の運用の見直し
・子が要介護状態の要件を満たせば、介護休暇等の制度も利用可能であること等について周知を強化。
・現行の要介護状態の判断基準について、子に障害がある場合等も踏まえ、今後検討することが課題。
(2)育児中の労働者の意向を尊重する配慮
・障害児等に限らず、ひとり親家庭等、各家庭における様々な個別のニーズに対応するため、勤務時間帯や勤務地、制度の利用期間などに関する希望など、個人の意向を聴取するよう事業主に義務付けることが必要。事業主はその意向を尊重することが適当。
6.仕事と育児・介護との両立支援に当たって必要な環境整備
(1)両立支援制度を安心して利用できる制度の在り方の検討
・休業中の待遇の周知に関する努力義務や、休業後の原職又は原職相当職への復帰に関する配慮規定等を周知徹底等していくべき。
(2)プライバシーへの配慮
・妊娠・出産等、介護等の情報を、社内で共有する範囲を定めるといった配慮が望ましい。
(3)心身の健康への配慮
・仕事と育児の両立のためにテレワークなどを活用する際、夜間の勤務等を理由に心身の健康の不調が生じないよう、事業主の配慮(勤務間の休息時間(勤務間インターバル)や勤務時間外の業務へのアクセス状況の確認、面談での健康状況への配慮等)や労働者自身のセルフケアなどを促すことが望ましい。
(4)有期雇用労働者の育児休業取得等の促進
・有期雇用労働者の育児休業取得促進について、産前・産後休業制度と併せて周知していくことが重要。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35285.html