【令和6年度における「両立支援等助成金」と「人材確保等支援助成金」の見直し案を提示】
令和6年3月12日に開催された「第68回 労働政策審議会雇用環境・均等分科会」において、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」の諮問が行われました。
雇用保険法等に基づく各種助成金について、令和6年度分に係る制度の見直しや新設等が行われる予定ですが、雇用環境・均等分科会では、そのうち、「両立支援等助成金」と「人材確保等支援助成金」の見直しを担当しています。今回の雇用環境・均等分科会の資料には、その内容を分かりやすく説明したものが含まれています。
■雇用保険法施行規則の一部改正関係
【両立支援等助成金】
子の年齢に応じて両立支援に対するニーズは変化し、特に子が3歳に到達して以降は、短時間勤務だけでなく、柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働くことに対するニーズも増していく。
これらのニーズに応えることが、男女が共に育児・家事を分担しつつ、キャリア形成も可能とするために必要であり、事業主に対して柔軟な働き方を可能とする取組を求めるべきであることから、働き続けながら子育てを行う労働者の雇用の継続を図るための就業環境整備に取り組む事業主を支援する両立支援等助成金について、以下の見直しを行う。
(1)出生時両立支援コース助成金の見直し
○出生時両立支援コース助成金について、以下のとおり拡充及び加算措置の新設を行う。(雇保則第116条第3項及び第5項(新設))
【現行制度の概要】
①第1種助成金
・育児休業取得
男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境の整備措置(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)に係るものに限る。以下同じ。)を複数(育児・介護休業法第9条の3第4項の規定に基づき出生時育児休業開始予定日を指定することができる期間を定めた事業主(以下「出生時育児休業開始予定日の指定可能期間を定めた事業主」という。)は、3つ以上)実施するとともに、代替する労働者の残業抑制のための業務見直しなどが含まれた労働協約等の規定に基づく業務体制整備等を行い、男性労働者について、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得させた中小企業事業主に助成金を支給する。
<育児休業等に関する情報公表加算>
「育児休業取得」の支給を受けた事業主について、申請前の直近年度に係る育児休業等の利用状況に関する情報を厚生労働省のホームページ「両立支援のひろば」で公表した場合に、支給する。
②第2種助成金
第1種助成金を受給した事業主において、育児休業を取得している男性労働者の割合が以下のいずれかの場合に支給する。
・第1種助成金を申請した事業年度(以下「第1種申請年度」という。)の翌事業年度以降3事業年度以内に30%以上上昇している場合
・第1種申請年度において、配偶者が出産した男性労働者が5人未満であり、当該年度における男性労働者の育児休業取得率が70%以上の場合に、第1種申請年度の翌事業年度以降3事業年度以内に2事業年度連続70%以上となった場合
※1同一事業主について、第1種・第2種とも、それぞれ1回限りの支給。
※2育児休業をした労働者1人当たりの額。
※31回限り加算。
※4第1種を受給した事業主が対象。
【見直しの内容】
○第1種助成金の拡充
・第1種助成金の要件の1つである雇用環境の整備措置を複数(出生時育児休業開始予定日の指定可能期間を定めた事業主は、3つ以上)実施することについて、現行制度において4つの選択肢から事業主が選択することとしているところ、5つ目の措置内容として新たに「育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置」を追加する。
・現行制度においては、第1種助成金の対象となるのは、中小企業事業主において要件を満たす最初の被保険者のみであるところ、以下の場合にそれぞれ10万円を支給することとする。
①当該中小企業事業主において要件を満たす2人目の被保険者については雇用環境の整備措置を3つ以上(出生時育児休業開始予定日の指定可能期間を定めた事業主は、4つ以上)実施し、かつ、10日以上の育児休業を取得させた場合
②当該中小企業事業主において要件を満たす3人目の被保険者については雇用環境の整備措置を4つ以上(出生時育児休業開始予定日の指定可能期間を定めた事業主は、5つ全て)実施し、かつ、14日以上の育児休業を取得させた場合
・中小企業事業主において第1種助成金の要件を満たす最初の被保険者に対して、雇用環境の整備措置を4つ以上実施した場合に、第1種助成金に10万円を加算して支給することとする。
○第2種助成金への加算措置の新設
中小企業事業主において第1種助成金の要件を満たす最初の被保険者が、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を終えるまでに、当該中小企業事業主がプラチナくるみん認定を受けていた場合であって、当該中小企業事業主が第2種助成金の要件を満たしたときに、第2種助成金に15万円を加算して支給することとする。
(2)育児休業等支援コース助成金の見直し
○育児休業等支援コース助成金における職場復帰後支援を廃止し(雇保則第116条第8項)、新設する「柔軟な働き方選択制度等支援コース助成金(仮称)」に再編する。
【現行制度の概要】
①育休取得時・職場復帰時
・育休復帰支援計画を作成し、同計画に基づく措置を講ずること。
・育休復帰支援計画の対象労働者が同計画に沿って3か月以上の育児休業を取得したこと。
②職場復帰後支援
・育児・介護休業法を上回る「A:子の看護休暇制度」又は「B:保育サービス費用補助制度」を導入すること。
・1か月以上の育児休業を取得した対象労働者が、復帰後6か月以内に一定の利用実績(Aの場合は10時間以上の取得、Bの場合は3万円以上の補助)があること。
<育児休業等に関する情報公表加算>
申請前の直近年度に係る育児休業等の利用状況に関する情報を厚生労働省のホームページ「両立支援のひろば」で公表した場合に支給する。
※11企業当たり各2人まで(無期雇用労働者・有期雇用労働者各1人)。
※2制度導入についてはA又はBの導入時いずれか1回のみ支給。導入のみの申請は不可。
※3制度利用については最初の支給申請日から3年以内に5人まで支給。さらに、1企業当たりAは200時間、Bは20万円が上限。
※41回限り加算。
【見直しの内容】
育児休業等支援コース助成金のうち、②職場復帰後支援を廃止する。
※新設する「柔軟な働き方選択制度等支援コース助成金(仮称)」に一部再編。
(3)柔軟な働き方選択制度等支援コース助成金(仮称)の新設
○既存の「育児休業等支援コース助成金」の職場復帰後支援を見直し、「柔軟な働き方選択制度等支援コース助成金(仮称)」を新設する。(雇保則第116条第14項及び第15項(新設))
【具体的な内容】
○子が3歳以降小学校就学前の間において柔軟な働き方を可能とするa)からe)までの制度(以下「柔軟な働き方選択制度等」という。)を複数導入した上で、育児期の柔軟な働き方の選択及びその後のキャリア形成について支援する計画(「育児に係る柔軟な働き方支援計画」)を策定し、対象被保険者(※)に柔軟な働き方選択制度等を一定以上利用させた中小企業事業主を対象とする。
a)始業時刻等の変更
b)テレワーク等
c)所定労働時間の短縮措置
d)小学校就学前の子に係る保育サービスの手配・費用補助
e)被保険者が就業しつつ小学校就学前の子を養育することを容易にするための有給の休暇(子の看護休暇を含む。)の付与
(※)a)、b)、d)、e)の利用実績については3歳未満の子を養育する被保険者も対象とする。
<育児休業等に関する情報公表加算>
申請前の直近年度に係る育児休業等の利用状況に関する情報を厚生労働省のホームページ「両立支援のひろば」で公表した場合に支給する。
※1対象被保険者1人当たりの額。1年度に5人まで。なお、対象被保険者には、3歳未満の子を養育する被保険者も含む(所定外労働時間の短縮措置については、3歳未満の子を養育する労働者について措置義務となっていることから、3歳未満の子を養育する被保険者については選択肢から除外する)。
※21回限り加算。
(4)介護離職防止支援コース助成金及び育児休業等支援コース助成金における新型コロナウイルス感染症対応特例の廃止
○介護離職防止支援コース助成金及び育児休業等支援コース助成金における新型コロナウイルス感染症対応特例を廃止する。(雇保則附則第17条の2の2及び第17条の2の4)
【現行制度の概要】
・介護離職防止支援コース助成金(新型コロナウイルス感染症対応特例)
令和2年4月1日から令和6年3月31日までの間において、ⅰに該当する中小企業事業主に対して、ⅱに定める額を支給するもの。
ⅰその雇用する被保険者について、新型コロナウイルス感染症に関する対応として、家族の介護を行うための有給休暇(介護休業(育児・介護休業法第24条第2項の規定により、育児・介護休業法第2条第2号に規定する介護休業の制度に準じて講ずることとされる措置に係る休業を除く。)、育児・介護休業法第16条の5第1項に規定する介護休暇及び労働基準法(昭和22年法律第49号)第39条の規定により年次有給休暇として与えられるものを除く。以下同じ。)を与えるための制度(休暇日数を合算した日数が20日以上であるものに限る。)を整備する措置及び当該制度その他の就業と介護の両立に資する制度をその雇用する労働者に周知させるための措置を講じている中小企業事業主であって、その雇用する被保険者に対して当該有給休暇を合計して5日以上取得させたもの
ⅱ被保険者が取得した有給休暇の日数を合計した数の区分に応じて、イ又はロの額(それぞれ5人までの支給に限る。)
イ:10日未満被保険者1人につき20万円
ロ:10日以上被保険者1人につき35万円
・育児休業等支援コース助成金(新型コロナウイルス感染症対応特例)
新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等により子どもの世話をする労働者のために特別休暇制度及び両立支援制度(ベビーシッターやテレワーク、フレックスタイム制等、学校休業等があっても勤務継続できる制度)を導入し、当該特別休暇を令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に取得させた事業主に対し、当該特別休暇の取得者1人当たり10万円を支給するもの。
※1事業主10人まで(上限100万円)
(5)新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コースの廃止
○新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース助成金を廃止する。(雇保則附則第17条の2の6)
【現行制度の概要】
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師等の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給(年次有給休暇で支払われる賃金相当額の6割以上)の休暇制度(年次有給休暇を除く。)を設け、当該制度と新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容を社内に周知し、当該休暇を合計20日以上労働者に取得させるとともに、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保に関する法律(昭和47年法律第113号)に基づく母性健康管理措置(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置を含む)について、就業規則等に規定し、周知した事業主に対し、助成金を支給する。
(対象労働者)
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として医師等の指導により休業が必要な妊娠中の女性労働者
(対象期間)
令和5年9月30日まで
(支給額)
対象労働者1人当たり20万円(1事業主につき5人まで)
【人材確保等支援助成金】
(3)テレワークコースの見直し
○テレワークコースについて、以下のとおり助成率を変更する。(雇保則第118条第2項)
【現行制度の概要】
就業規則等によりテレワーク制度を整備した中小企業事業主であって、都道府県労働局から認定を受けたテレワーク勤務の実施に係る計画に基づき、テレワーク用通信機器の導入等を行い、かつ、評価期間における対象労働者のテレワークの実績が一定の要件を満たした事業主に対し、機器等導入助成を支給する。さらに、評価期間後1年間の離職率及び評価期間初日から1年を経過した日からの3か月間におけるテレワークの実績が一定の要件を満たした中小企業事業主に対し、上乗せで目標達成助成を支給する。
(支給額)
A:機器等導入助成
・1企業当たり、テレワークを可能とする措置に要した費用の30%に相当する額(上限:対象労働者数×20万円又は100万円のいずれか低い額)
B:目標達成助成
・1企業当たり、テレワークを可能とする措置に要した費用の20%(賃上げ要件を満たした場合は35%)に相当する額(上限:対象労働者数×20万円又は100万円のいずれか低い額)
【見直しの内容】
(支給額)
A:機器等導入助成
・1企業当たり、テレワークを可能とする措置に要した費用の50%に相当する額(上限:対象労働者数×20万円又は100万円のいずれか低い額)
B:目標達成助成
・1企業当たり、テレワークを可能とする措置に要した費用の15%(賃上げ要件を満たした場合は25%)に相当する額(上限:対象労働者数×20万円又は100万円のいずれか低い額)
「両立支援等助成金」については、出生時両立支援コース助成金の見直し、育児休業等支援コース助成金の見直し、柔軟な働き方選択制度等支援コース助成金(仮称)の新設が予定されており、「人材確保等支援助成金」については、テレワークコースの見直しが予定されていますので、関連資料を確認しておくことをお勧めいたします。
詳しくは下記参照先をご覧ください。
- 参照ホームページ [ 厚生労働省 ]
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38560.html