【これまでの規制・制度改革の成果と改革の更なる発展・深化について】
首相官邸において、「第20回 規制改革推進会議」が開催されました。今回の会議では、これまでの規制・制度改革の成果と改革の更なる発展・深化について議論が行われ、規制改革に関するこれまでの取組と成果をまとめた資料が公表されています。
【規制改革に関するこれまでの取組と成果】
Ⅰ.革新的サービスの社会実装・国内投資の拡大
●交通物流
○地域の移動の足不足の解消を目的に、21地域で自家用車を利用した「自家用車活用事業」を開始【R6年度】
例えば、東京では週に1,454台が稼働し、9,377回の輸送を実施(8月第2週目)。また、札幌(8月第2週目)や仙台(8月第1週目)では、全ての時間帯でアプリでタクシーを呼べる状況に。
出典:国土交通省モニタリング調査
※足不足解消への効果は、モニタリング・検証、評価を実施中。
○交通不便の地域における自家用有償旅客運送の制度改善【R5年度】
交通空白地の定義が柔軟化された新制度を活用し、神奈川県三浦市、石川県小松市等の5団体が事業を開始済。
出典:規制改革推進室令和6年5月21日第15回地域産業活性化ワーキング・グループ資料
○地域への物資輸送の促進のためのドローンのレベル3.5飛行【R6年度】
・目視外飛行において、デジタル技術(機上カメラ)の活用により従来の立入管理措置が撤廃。
・レベル3,5飛行に係る承認実績は13社(令和6年7月末時点)。食料・医薬品等の中山間部への運搬として飛行回数320回以上の実績を有するドローン物流企業もある。
・オンライン申請システム改修後はさらなる増の可能性。
○配達や訪問看護のための短時間の駐車を可能に【R6年度】
警察署管轄を超えてオンラインで一回の駐車許可申請を可能に。訪問看護は「除外標章」の対象に追加。タワーマンションに荷さばき用駐車場の設置を義務づけ。
●観光
○インバウンドの受け皿としての古民家、別荘等(簡易宿所。全国約4万施設(R4年時点))の有効活用【R6年度】
コールセンターなど遠隔対応を可能にすることで、フロントや駆付け人員待機不要化を検討。
●医療
■利用者起点のデジタル化・オンライン化
○オンライン診療がコロナ前からの4年で400倍以上に増加【R4~6年度】
・オンライン診療の諸制約の撤廃、診療報酬見直し等を実施。オンライン診療の実施回数は、136回 注1(令和元年6月審査分)、1,278回 注1(令和2年6月審査分)、696回 注1(令和3年6月審査分)、35,595回 注2(令和4年6月審査分)、58,882回 注2(令和5年6月審査分)。
※厚生労働省「社会医療診療行為別統計」をもとに事務局算出
注1:「初・再診料」のうち「オンライン診療料」の回数
注2:「初・再診料」のうち「初診料情報通信機器を用いた場合」及び「再診料情報通信機器を用いた場合」の回数
・犬猫などペットについてもガイドラインを策定(令和6年度予定)
○オンライン服薬指導が2年で200倍以上に増加【R4,5年度】
オンライン服薬指導の諸制約の撤廃。オンライン服薬指導の回数は、81回 注3(令和3年6月審査分)、10,408回 注4(令和4年6月審査分)、17,183回 注4(令和5年6月審査分)。
※厚生労働省「社会医療診療行為別統計」をもとに事務局算出
注3:「薬剤服用歴管理指導料4」のうち通信機器を用いた指導の回数
注4:「服薬管理指導料4」のうち情報通信機器を用いた服薬指導の回数
○通院不要な治験(オンライン治験)の実現で希少疾患等の医薬品開発【R4年度】
治験の一部を(通院ではなく)オンラインで実施可能に。
○登録販売者の店舗管理者要件の緩和(実務要件2年→1年及び追加的研修)【R4年度】
ドラッグストア等の医薬品を販売する店舗に必要な「店舗管理者」の要件を新たに満たす登録販売者は、約4,000人以上。(令和6年3月末時点)
※厚生労働省へのヒアリング
(参考:一般用医薬品を販売する店舗は28,886店舗(令和4年度)出典:厚生労働省「衛生行政報告例」)
○コロナ抗原検査キットのOTC化(薬局でも入手可能に)【R4年度】
一般用抗原検査キット(OTC)として16製品が承認(令和5年4月時点)
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報」
○調剤業務の一部外部委託による薬剤師の対人業務の強化・対物業務の効率化【R4,5年度】
大阪市で国家戦略特区を利用し、4社8薬局で令和6年8月から実施。
○マイナンバーカードを利用した公費負担医療の資格確認【R5年度】
こども医療費助成や国の公費負担医療に関して、マイナンバーカードを受給者証として利用し、受診を円滑化。
令和6年3月から5自治体において実施。さらに172自治体については、令和6年秋以降実施予定。
出典:デジタル庁「令和6年度(2024年度)PMH(医療費助成)先行実施事業の二次公募結果について」
■データの利活用・開発促進
○プログラム医療機器(SaMD)のうち、臨床開発中の治療用プログラムが2年で2.8倍に増加【R4~6年度】
二段階承認制度導入等によるプログラム医療機器(SaMD)の開発・市場投入の促進。
12製品(令和4年8月)、15製品(令和5年5月)、34製品(令和6年7月)
出典:㈱日本総合研究所の独自調査
○薬の開発、副作用防止のための医療データの利用数が1.5倍に(NDB医療データの利活用)【R5年度】
・270億件のレセプト情報を格納するNDB(National Database of Health Insurance Claims)を悪用防止を前提に製薬企業等が研究や開発などにも利用可能に。申請からデータの利用までが平均390日→原則7日に短縮予定注。注:解析用に処理したNDBデータ
・製薬企業等へのNDBデータの提供件数:令和4年度72件、令和5年度105件。
出典:令和5年11月13日「第1回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報の二次利用に関するワーキング・グループ」資料及び事務局調べ
○学術研究・EBPMの推進のため国の統計元データの提供にかかる期間の短縮(調査票情報の二次的利用)【R5年度】
マニュアル作成・様式の統一等による審査の標準化・効率化。
令和4年度(厚労省の事例):平均46日(数か月、1年超の事例もあるとの指摘)
令和5年度(全省庁):平均1か月以内(最短5日(総務省)最長18日(国交省))
※総務省ヒアリング令和6年度(全省庁):原則平均1週間以内に。
■医師偏在の緩和
○在宅医療を提供する環境の整備【R5,6年度】
他の診療所の管理者(常勤)が、へき地等医師が少ない区域等の診療所の管理者(非常勤)を兼務可能であることを明確化。
●介護
○介護DXの推進による介護人材不足の緩和(人員配置基準の特例的柔軟化)【R4,6年度】
令和6年度から介護ロボット・ICT機器の活用などを行う高齢者施設の人員配置基準を、要介護者:看護・介護職員=3:最小0.9(従来、3:1)とし、最大10%緩和。
○デジタル、AI等を活用した要介護認定の迅速化等【R6年度】
要介護認定審査会の簡素化範囲の拡大や要介護度判定における最新データの活用・認知症対応の認定調査項目等の検討。
要介護認定業務のデジタル化やAI活用の検討。
●公共
■デジタル時代に対応した改革
○ほとんどの国立大学で受験料、入学金等のデジタル納付が可能に【R6年度】
86校の国立大学のうち、入学金については、令和6年度中に63校(73%)が対応完了(導入済47校・令和6年度中16校)。
また、入学検定料については、84校(98%)が対応完了(導入済82校・令和6年度中2校)。
出典:令和6年文部科学省調査
○地方公共団体への公金納付のデジタル化【R5~6年度】
国民健康保険料等(件数が多いもの)や、道路占用料(事業者ニーズが高いもの)、水道料金等について、令和8年9月までにeLTAXを活用した納付を可能となるよう法律を改正。
○社会保険手続のマイナポータル上での申請完結【R6年度】
年金受取口座の変更や生活者支援給付金の申請など社会保険に係る手続について、マイナポータル上でオンラインフォームによる申請を可能に。
■行政手続の効率化
○介護、就労証明など、地方公共団体への申請手続きにおける「ローカルルール」の廃止【R4~6年度】
事業者等が複数の地方公共団体に毎年度行う全ての申請などの手続様式等は、自治体任せではなく、新設・改正時に国が法令等で規定し統一。
○地方公共団体の窓口業務の官民連携による集約化・効率化【R6年度】
「住民票の写し等の交付」、「住民異動届」など窓口業務について、職員常駐なしの民間委託を促進。
●教育
○先生の確保が難しい地域における小中高での遠隔教育(オンライン教育)を可能に【R6年度】
都道府県の判断で、普通免許状以外の教員(特別非常勤講師等)を児童生徒のいる教室に配置して遠隔教育を可能とする告示改正等(令和6年)。長野県等で実現に向けた検討中。
○小中高で英会話学校講師など外部人材の活用数が1.5倍に(特別免許状制度の透明化)【R4年度】
・各都道府県における特別免許状授与基準の策定・公開の促進等の措置を実施。
・特別免許状授与件数は334件(令和3年度)→500件(令和4年度)と約1.5倍。
出典:文部科学省「令和4年度教員免許状授与件数等調査結果について」
●農林水産業
○農地を所有できる法人の要件緩和による農地の有効利用、食料生産増【R6年度】
農業関係者がその議決権の過半→農業関係者及び食品事業者等で過半(令和6年通常国会での農業経営基盤強化促進法改正)。
○農業用施設の建設に係る農地転用許可の迅速化【R6年度】
地域計画に定められた農業用施設について農地転用許可不要とすることで、農業者が農畜産物の加工・販売施設等を内外の景況等に応じて迅速・円滑に建設することが可能に。
○畜舎に関する規制の見直し【R4年度】
畜舎特例法の対象に、畜舎に付随する倉庫、車庫、貯水施設、発酵槽等が追加され、建築確認等が不要になるとともに、建築基準法の防火基準よりも緩和された基準で倉庫や車庫を建てることが可能となることで、建築コストの削減や行政手続の負担軽減を図ることが可能に。
→畜舎特例法の認定状況、令和4年度223件、令和5年度200件、合計423件
○改正漁業法の運用改善【R4~5年度】
漁協の組合員加入について、適切な制度運用がなされるよう指導。
→都道府県庁ヒアリングによる指導の実施回数:40件
未利用漁場における漁業権の有効活用による新規参入の促進。
→令和5年9月から翌年4月にかけて都道府県において行われた漁業権の一斉切替えにおいて、新規の漁業権として免許された件数:延べ830件(暫定値)
Ⅱ.スタートアップの成長基盤の整備
●スタートアップ
■人材
○海外のスタートアップ起業人材の在留期間を2年に延長【R4~6年度】
スタートアップビザの在留期間(事業の規模、事業所の確保の二要件を猶予)につき、最長1年6か月→最長2年(令和6年中に措置予定)
○優秀人材、がんばった人材への報酬を「株式」でも可能に【R6年度】
企業が人材を円滑に確保しやすくなるよう、従業員等に対する無償での株式交付を可能とするための会社法改正に向けた検討開始。
■資金 ※参考:我が国のスタートアップの数は2021年の16,100社から2023年には22,000社へと約1.5倍に増加出展:INITIAL
○スタートアップ設立の迅速化・手数料引下げ、公証人への民間登用促進【R4~6年度】
・手数料について、一律5万円を資本金額に応じて3~5万円に減額(令和3年度)し、さらに、3万円の区分を半額程度に引下げを検討(令和6年度)。
・手続に要する時間は、定款認証手続から法人登記含め72時間(令和6年度上期)とし、モデル定款作成のためのシステム構築後、24時間まで短縮予定。
・公証人公募時における平均収入、経費割合の開示等により民間人材の登用を促進。(令和6年度以降)
○スタートアップなどによる自社株を利用する海外企業買収を可能とする制度検討【R6年度】
株式を対価とする買収方法(株式交付)を外国会社の買収にも利用可能とするなど活用範囲を拡大するとともに、手続を簡素化するための会社法改正に向けた検討開始。
○未上場企業の資金調達コストを抑制(非上場株式の発行・流通の活性化)【R6年度】
資金調達額1億円を境に大幅に負担が増える金商法の開示コストを、調達金額に応じた負担に。(令和6年度検討)
■事業活動
○プロ以外の楽曲・イラスト等を活用可能に【R4年度】
アマチュアが創作した楽曲をゲームに使う、著作者不明のイラストを商品パッケージに使うなど、著作権者の意思が確認できず集中管理もされていないコンテンツの利用円滑化(令和5年度著作権法による新たな裁定制度導入、令和8年施行)。
○多彩なデザイン、工期短縮を実現する建築用3Dプリンターの社会実装に資する環境整備【R5年度】
建設用3Dプリンターを活用する上で、材料の一つとなる「モルタル」の取扱いについて、地方自治体や指定確認検査機関等が適法性を確認する場面において、その適切な判断に資するための文書を作成。
○企業の契約トラブル対策:「AI契約書レビュー」導入の加速【R5年度】
ガイドラインを令和5年8月に策定し弁護士法上の判断基準を整備。あるサービスでは利用事業者数が1年で約4割増加。
Ⅲ.良質な雇用の確保、高生産性産業への労働移動
●雇用・労働
○「自爆営業」の根絶(「パワハラ防止指針」改正の検討開始等)【R6年度】
自社商品を従業員に無理に購入させる「自爆営業」の根絶に向け、自爆営業の類型等を明確化し、パワハラ防止指針改正を令和6年度に検討。
○「偽装フリーランス」の防止【R6年度】
実態は労働者でありながら、自営業のフリーランスと扱われ最低賃金等の保障も受けらない「偽装フリーランス」問題を解決するよう、労働者と自営業者の線引きを明確化。
○ノウハウ流出のおそれがない副業・兼業の円滑化(「競業避止契約」の適正化)【R6年度】
ノウハウを持たない従業員など、ノウハウ流出の具体的なおそれがない場合の副業・兼業に関する制限の是非など考え方を明確化。
○副業・兼業社員に関する煩雑な労働時間通算管理の見直し(割増賃金関係)【R6年度】
副業・兼業社員の超勤にかかる割増賃金の支払いにおける労働時間の通算管理の仕組みについて、労働管理の効率化の観点から不要化を検討(過労防止のための通算は別途必要)。
「規制改革実施計画」を踏まえた規制改革の更なる発展・深化について(案)
成長型経済の実現に向け、地域における人手不足等の経済社会の課題克服と、生産性の向上・競争力強化につながる投資拡大によって成長力を強化することが重要であるとの認識の下、規制改革推進会議では、「規制改革実施計画」(令和6年6月21日閣議決定)を踏まえ、「革新的サービスの社会実装・国内投資の拡大」、「スタートアップの成長基盤の整備」、「良質な雇用の確保、高生産性産業への労働移動」について、利用者起点の規制改革を更に発展・深化させるべく議論を進めていき、また、既に改革が決定した事項について、その具体化・フォローアップを進めるとともに、可能なものについては前倒し・深掘りを検討するとのことです。
<検討事項(例)>
【革新的サービスの社会実装・国内投資の拡大】
●地域の社会課題の解決・人口減の克服~人口減少など地域が直面する課題を乗り越え、豊かな生活を実現する
(交通)
○ライドシェアの全国展開※
(健康・医療)
○利用者起点の医薬品販売規制見直し(販売区分・販売方法、オーバードーズ対策等)※
○在宅医療における円滑な薬物治療の提供※
○オンライン診療の更なる推進※
○救急現場におけるタスク・シフト/シェア
○医師の宿直義務の緩和(宿直体制におけるICT技術の活用等)
(保育)
○認可保育園における付加的サービス(英語、体操等)の円滑化
(農業等)
○所有者不明農地など土地の有効利用
○フードテック(細胞性食品)の安全な事業化に向けた制度整備等
●国内投資の拡大、DX・GXの推進~社会課題解決と成長につながる投資拡大に向けた障壁を打破する
(DX)
○賃金のデジタル払いの拡大※
○医療等データの利活用法制等の整備※
○バーチャルオンリー株主総会の実現
(GX)
○水素の供給・利活用(圧縮水素タンク、水素ステーション等)
(外国人材)
○子育て世代の外国人材の活躍(インターナショナルスクール(1条校)の9月入学の解禁)
(公共)
○キャッシュレス社会の促進(印紙・証紙に係る見直し等)
○ローカルルール等の更なる見直し(地方公共団体の調達手続、コンビニ納付等)
○死亡・相続手続の負担軽減(後見人制度の利用促進、年金手続の見直し等)
【スタートアップの成長基盤整備】
●起業家の負担軽減
○公証人制度及び定款認証制度の見直し※
●資金・人材の獲得
○非上場株式の発行・流通の活性化※
○株式報酬の無償交付の対象者拡大※
○スタートアップの柔軟な働き方(労働時間規制等)
●成長の加速
○株式を対価とするM&Aの手法の活用範囲拡大※
○ベンチャーキャピタルのガバナンス強化等によるスタートアップ育成力の強化
【良質な雇用の確保、高生産性産業への労働移動】
○競業避止義務と副業・兼業の両立※
○フリーランス・ギグワーカーの保護、偽装請負の防止※
○労使双方が納得する雇用終了の在り方※
○年次有給休暇の時間単位取得における上限規制の見直し
※過年度決定事項の具体化、前倒し・深掘り事項を含む。
検討することとされている事項の動向に注目です。
詳しくは下記参照先をご覧ください。