【労務】時間外労働の上限規制等について
厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会は、平成29年6月5日、「第136回労働政策審議会(労働条件分科会)」を開催し、時間外労働の上限規制等について厚生労働大臣に対し建議を行いました。その資料が公表されています。
これは、平成29年3月に決定した「働き方改革実行計画」を踏まえて、平成29年4月から、同審議会の労働条件分科会において審議を重ねてきた結果を報告するものです。報告内容は、これまでの審議してきた内容を適当と認めるものとなっています。
◎この20年間の労働時間の状況
・一般労働者の年間総実労働時間が2000時間を上回る水準で推移している。
・雇用者のうち週労働時間60時間以上の者の割合は低下傾向にあるものの7.7%と平成32年時点の政労使目標である5%を上回っており、特に30歳代男性では14.7%となっている。
・平成27年度の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は251件(うち死亡の決定件数は96件)、精神障害による労災支給決定件数は472件(うち未遂を含む自殺の決定件数は93件)となっている。
◎時間外労働の上限規制
・時間外労働の上限規制は、現行の時間外限度基準告示のとおり、労働基準法に規定する法定労働時間を超える時間に対して適用されるものとし、上限は原則として月45時間、かつ、年360時間とすることが適当である。
・上限に対する違反には、以下の特例の場合を除いて罰則を課すことが適当である。
・一年単位の変形労働時間制(3か月を超える期間を対象期間として定める場合に限る。以下同じ。)にあっては、あらかじめ業務の繁閑を見込んで労働時間を配分することにより、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提とした制度の趣旨に鑑み、上限は原則として月42時間、かつ、年320時間とすることが適当である。
・上記を原則としつつ、特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることができない時間外労働時間を年720時間と規定することが適当である。
・年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として、①休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で80時間以内
②休日労働を含み、単月で100時間未満
③原則である月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回までとすることが適当である。
◎勤務間インターバル
・労働時間等設定改善法第2条(事業主等の責務)を改正し、事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当である。
・労働者の健康確保の観点から、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設け、「前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を確保すること(勤務間インターバル)は、労働者の健康確保に資するものであることから、労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」等を追加することが適当である。
◎健康確保措置
(1)医師による面接指導
・長時間労働に対する健康確保措置として現行では、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり100時間を超えた者から申出があった場合に義務となっているが、この時間数を定めている省令を改正し、1か月当たり80時間超とすることが適当である。
(2)労働時間の客観的な把握
・すべての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定することが適当である。その際、客観的な方法その他適切な方法の具体的内容については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を参考に、通達において明確化することが適当である。
参照ホームページ[厚生労働省]
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000166799.html